E-DESIGN|Landscape design, Architectural design, Construction

なんばパークス2期・ランドスケープデザイン

本計画は複合商業施設の屋上公園であることから、プログラムとデザインのバランスが強く求められた。

また、来訪者も多種多様であり、時間や季節の変化への対応も必要であった。

そして、第1期の大きなプログラム(屋外劇場、都市型菜園など)の補完として、第2期では小さなプログラムを展開するスペースづくりを目指した。

レイヤー状に連なる小さなプログラムは、回遊や滞留のアクティビティを促進し、「見る×見られる」という都市的な居心地の良い屋上空間を提供している。

 ステップガーデンでは、休息及び通路スペースと植栽スペースを緩やかな円弧を描きながら、レイヤー状の入れ子に配置している。また、休息スペースに様々なデザインのアートベンチを設置することによって、来訪者は、森の中を散策するような体験をしながら、状況や気分に応じてお気に入りのベンチを発見し、休息を行うこととなる。「森の観客席」(旧大阪球場の外野観客席の同位置)として、他の来訪者や屋上公園全景を眺めて過ごす滞留性の高いテラスを実現している。

 はらっぱ広場は、太古、計画地が海であったことや建築デザインがキャニオン的な隆起地形をモチーフにしていることからヒントを得て、木製遊具(間伐材を利用)による「森の水族園」を提案した。魚群のような遊具や樹木は、屋上公園のレイヤーに従って配置し、パーゴラやビオトープなどと一体となって、子供たちの冒険心を喚起している。芝生広場部には、ジミー大西氏制作による「天海の輝き」が設置されている。

 ヒルトップテラスは、来訪者の居場所として最頂部にあり、建築デザインのキャニオン(渓谷)が開けた立地にあることから、「空」を感じる場所である。その立地特性をモチーフとして、雲のようなグリーンアートのオブジェを展開した。白いオブジェの端部は座ることが可能で、展望機能と休息機能を備えたアートギャラリーとしての広場を実現した。

<設計プロセス>

■計画および設計においてアピールすべき点

大阪球場跡地を含む大規模複合再開発プロジェクト。1期建物と連続した2期建物の屋上公園のランドスケープデザインである。建築とランドスケープが一体となった「緑の丘」を都心に創出する商業施設を中心とし、業務棟、住宅棟を付属した開発となっている。

四季折々の木々や草花に囲まれた園路を巡りながら、広場やイベント等に出会う設えとなっている。今回の2期工事では緑と居場所がより重層的に折り重なるよう「レイヤー型」のデザイン手法で計画している。

■計画および設計において留意した与件

(場の特異性、施主の意向、自然条件、社会条件、事業プロセスなど)

本計画は第1期エリア開業後、約1年を経てから第2期屋上公園エリアの計画開始という時間的なズレがあった為、先行エリア(第1期エリア)とのデザイン的連続性とプログラム的相互補完性、また、先行して計画されていた第2期エリア建築デザイン(アウトライン)との調和という与件が当初よりあった。



<フォーカスポイント>

■与件に対する取組の要点(解決手法、残った課題など)

今回工事建築形状が円弧状の回遊型となっていること、また、第1期屋上公園の植栽地及び、広場の配置がゾーニング型になっていることから、第2期屋上公園部ランドスケープデザインの基本方針として施設や植栽、フロアパターンを「レイヤー型」とした。そうすることにより、第1期エリアとの連続した緑という関係性を担保しつつ、「人」と「緑」の異なる関係性の創出を実現し、第1期との空間の相互補完性を高めた計画となっている。

■概要

なんばパークス2期・ランドスケープデザインは、複合商業施設なんばパークス内の一つのエリアである。なんばパークスは大阪市内南部の中心地に位置し、大阪球場跡地を含む3.3haの難波再開発A-1地区に含まれ、地区内は他に、超高層の業務棟(パークスタワー)と住宅棟(ザ・なんばタワー)がある。建設工事は、商業棟第1期計画+業務棟(竣工2003年9月)と商業棟第2期計画(今回応募作品範囲を含む)+住宅棟(竣工2007年3月)というスケジュールで進められた。商業棟(なんばパークス)を核とした街の全体構想案は、米国の商業デザイン事務所(ジャーディ・パートナーシップ・インターナショナル)の協力を得ながら、大林組設計部等によって立案された。

「都市と自然と人の融合」をコンセプトに、都市の上に自然を重層させた新しい都市の構造の創出が目指された。第二の大地とも呼べる段丘状の屋上公園(パークスガーデン)は、来訪者が無料で自由に回遊できる屋上緑化広場とし、地上から段丘状にせり上がる建物の各階には、自然が身近に接する広場やテラスを設け、都市と自然が同時に体験できる場づくりが目指された。

 第1期の屋上公園(ランドスケープ設計:ヘッズ)は、約8,000㎡、第2期の屋上公園(ランドスケープ設計:弊社)は、約3,500㎡である。全体では、約11,500㎡となり、民間開発事業では国内最大級の規模である。

名称
なんばパークス2期・ランドスケープデザイン
所在地
大阪府大阪市浪速区難波中二丁目10番70号
規模
約3,500m²
竣工
2007年4月
主要用途
商業施設、屋上公園
デザイナー
長濵伸貴
受賞
2014年度日本造園学会奨励賞(設計作品部門)

PROJECT