近年の地方再生などの動きを受けて、公園や広場などのランドスケープ空間に求められる役割も多様化しています。地域のにぎわい創出に始まり、高齢者や子育て層の活動を支える場として機能することが求められ、レクリエーション、休息、あるいは教育の場としても期待されています。もちろん、生物多様性を保つ場であったり、防災拠点としても位置付けられています。さらに、公園や広場の管理に民間のノウハウを活かしたマネジメントをおこなう試みも多く見られます。
これら求められる機能をそれぞれのランドスケープ空間で吟味するため、近隣住民参画が重要視されていることは言うまでもありません。近隣住民が共感できるまちづくりや都市計画の視点からも、多様な参画のプロセスの充実が求められています。

このような状況の中で、従来の画一的なスペックを与える設計行為だけでは、今後のランドスケープやまちづくりの価値を創出する空間づくりは難しく感じられます。多様な意見を集約しつつ、地域再生や活性化に寄与するランドスケープデザイン・まちづくりを実現していくには、新たなデザインのプロセスを考えていく必要があります。

求められるランドスケープ・まちづくりの実現のためには、以下に示す3つのデザインの視点を同時に吟味していくことが重要であると考えています。
ひとつは、「活動プログラムのデザイン」（うごき）
2つめは、「持続可能な仕組みのデザイン」（しくみ）
3つめは、物理的な空間を提供する「環境のデザイン」（かたち）

これら3つの視点をデザインとして総合して検討していく姿勢を持ち、チームビルディングをおこない、これらを相互に関係付けながらランドスケープデザインやまちづくりに反映します。また、この3つのデザイン視点を総合して生み出された価値を、計画、基本設計、実施設計、施工、完成後の管理へとつなげていくヴァリューチェーンの仕組みづくりも重要となります。
それぞれの段階での市民ワークショップを細やかに開催し、以後の公園・広場やまちづくりの活動に関わる機会をつくっていくことと、3つのデザインプロセスを相互補完的に結びつけながら進めていくこと。これが、完成後も「場」を育んでいく市民が集い、その後の活動や展開などを支えていく大切なポイントとなるでしょう。